悪魔メイド♡マインちゃん エピソード1 不滅の太陽編 再放送

『超越する者』①

太陽は人々に、生命の輝きを与え、邪な者を清める。

永遠とも思える時間に存在していたそれ、太陽の死は、一つの生命の時代が終わりを告げる頃だと、私は思う。

だが、決して滅ぶことのない、そして邪な者に深い闇を与える、「悪意の太陽」が存在していた。

それは、闇の中でも輝きを放ち、光にさらされても燃え続ける、不滅の太陽だった。

その瞳は吸い込まれるような真紅、たちまち見つめ合う者の心を奪い、その存在なくして生きられないとさえ思わせる。

我々が太陽がなければ生きられぬよう、希望を失いかけて天を仰ぐよう、闇に巣食う者のカリスマとして君臨する。

その闇はやがて世界を覆い尽くし、悪がこの星を支配するのも夢ではない。

そのような力を持っているのに、その存在は辺境に姿を隠し、悪魔の子達と共に、静かに暮らしていた。

「ミテ様、お紅茶入りましたー」

俗に言う、メイドの衣装を身にまとった幼子が、紅茶の入ったカップを運びながら、そう言う。

「ありがとう、マイン…お前もなかなかメイドが様になってきたんじゃあないか?」

金色の長髪の男がメイドの運んできたカップを受け取る。

「えへっそうですかぁー? これもメイドさんのお友達のおかげですかね?」

「永い時を生きる悪魔が、いつまで泣き虫のままでいるかと思っていたが」

「ミテ様はいつもそう言う! 悪魔だって成長するんです」

全ての悪魔、生物の頂点、星の支配者として、生まれたはずだった、この男の今の名前は「ザルミテ」。

そしてそのメイド、「インプ」という下級悪魔の子供(?)、名前は「マイン」という。

どちらも人の形をとってはいるが、その存在は人間に害なすものであり、その姿も真の姿ではない。

ザルミテに至っては真の姿は存在せず、何千何万何億、あるいはそれ以上の姿を持ち、どのような存在にでもなれる。

よりによって彼らは「人間」に近い姿で午後の紅茶(アフタヌーンティー)を嗜んでいる。

この異様な状況だが、ザルミテは元々は高貴な生まれの人間であった、その時の習慣だと言っている。

ただの人間が、人間を、全ての生物を超越する力を得た…とても信じられない、おかしな話だ。

「人間は成長するもの…と、誰かは言ったが、成長せず姿を変えない生き物などいるのか? いない…悪魔に成長はないんだよ」

「だから私は、人間の子供に近い姿をしているんです…何年もこの姿でも、精神的に強くなっていますって」

「ちょっとからかっただけだよ 精神の成熟を成長とすれば、いつまで経っても成長しない人間だっている だがマイン、お前は成長している……」

「なんですかーそれ! それでも紳士ですか!」

「なにを言っているんだお前は」

……………………………………………『人間の成長』②

彼がそのあまりにも強大な力を得た過去に、弱さがあった。

遡れば、何世紀も前になる。

彼の生まれは、ある領主の息子だった。

彼の父は邪悪であったと、彼は感じていた。

彼の父は当時、祖国が戦争をするというときに、超常的な力を持つサイキッカーの研究に携わっていた。

どういうわけだか、国は超能力を欲していた、最先端の戦争技術と並んで。

その研究は、人の身体ばかりではなく心まで壊し、誰も辿り着いたことのない世界を見るための探求だったから、多くの間違いや行き過ぎた行為が悲劇を呼んでいた。

父はサイキッカーの素体となる人員を集める立場にいた。

その男は小さな村でさえ見逃すことなく、徹底的に素質ある者を探させた。

反抗する者がいる村を焼くことだって簡単にする男だった。

彼は、父に優しくしてもらったり、父だと思ったことはなかった。

微かな記憶の奥にいる、母親も、この男に食い潰されたと思うと、怒りを超えて感覚が麻痺してしまいそうだった。

ただ、絶対に報復してやると誓っていた。

この邪悪の首を、誰よりも先に絞めて殺すのは自分だ、こいつのために誰かが不幸になるのを止めるのが自分の生きる意味だと。

彼の心は冷え切っていた、すでに暗い闇の底にあった。

「私は………人間が過ちを繰り返し、それでもその過ちを認め、強くなれると信じている…人間だった頃には考えられなかったことだが」

「過ちの数だけ、強くなれるのだ、そして二度と繰り返さない力を手に入れるんだよ」

「マイン、お前は私のそばで過ちとは無縁に生きてきたな…お前は強くなくてもいいんだよ」

「私は、ミテ様のそばでたくさんのことを知りました、言葉遣いとか、美味しい食べ物とか、変化(へんげ)の仕方とか」

「私は幸せな悪魔です ミテ様は私の全てを知っている…悪魔の私に、触れ合える温もりを教えてくれたお方」

「でも、まだ知りたい 私はまだミテ様の全てを知らない、愚かなことかもしれませんが、あなたの全てを知りたいと思ってしまう」

「…私は、お前を人間のように育てていた…自分の子供のように、知らないうちに…まだ一人前と認めていないがね」

「だがまるで、永遠を誓い合った恋人のようなことを言う、子供の言うことじゃあないな」

「いけませんかね? 悪魔に魂があるなら、私の魂はあなたに捧げたものなんです」

「…おい、ちょっと待ちな…ん?なかなか素敵だが…こういう仕草を教えた覚えはないな」

「んー?…えっおっんん? 私、何か恥ずかしいことしてますか?」

「…いや、気にしなくてもいい それがマイン、お前の本当の姿だからな…」

「ええっと、なんだっけ 知りたいのは私の過去だっけ?」

「…ああ!そう言えばよかったんですね!そうです!聞きたい!」

「言っておくが面白い話じゃあないぞ 滑稽という点では当てはまるが…決して愉快でも痛快でもない」

「お前の好奇心を尊重して聞かせてやるが、話すのはお前だけだ …私の弱さだからな」

「問題ありませんよ 私はあなたの全てを知りたい…私の全てを知っていて、受け止めてくれるあなたのように」

……………………………………………『最も古い記憶』③

「お父様」

「どうした『 』…珍しいではないか…お前が顔を出すなんて」

「その少女は……」

「……私の新しい友達だよ…せっかくなんでお前にも紹介してやろうかな…ん?」

(こいつの新しい実験台か…傷一つないが他の人形共とは違うのか? 生きた心地のしていない目をしやがって…)

「初めまして、お嬢さん 私の名は『 』と申します お名前をお聞かせください」

「初めまして、お兄さん 私は…『マリナ』と呼んでください」

「…フン、仲良くできそうだね…何も用がないのなら自分の部屋に戻っているんだな」

「わかったよ、父さん」

「なんだと?」

(本当の父と子なら、これくらいの会話をするんだろうな こいつは私にまるで関心を持っていない)

「…どういう風の吹き回しか知らんが…気に食わんことを言うようになったものだな」

「…ご主人、息子さんとは」

「次に息子の話をしたらお前が特別であっても罰を与えることにする、わかったかね?」

「わかりました……」

……………………………………………『夕食前の無駄話』④

「『 』さん、お夕飯を運びに参りました」

「ん…マリナさん…だったか いいよ、そんなの召使いがすることだろう」

「いえ、そのような認識で構いません 今日からお世話になります」

「そうか、こちらこそ」

「では、私はこれで…しばらくしたら片づけに」

「あ、ちょっと待って」

「はい?」

「この家に、マリナさん…あなたのような年頃の女性がこの家に入ることはなかった、それはいかなる理由でも、だ」

「………」

「召使いは、間に合っているし、特に私のような厄介者に割く人員は少数…それなら、父の」

「私は、勉強に来ています」

「…なんだって?」

「彼は私を気に入ってくださったのです だから、私が望む物を与えてくださるのです」

「君は…一体、父の、あの男のなんなんだ?」

「あなたは本当に、あの人とは疎遠なのですね」

「おい、ちょっと待ってくれ 話はまだ途中だろ」

「ふふ、お料理が冷めてしまいますよ また後で、お話を聞かせてくださいね」

「(マリナ…とかいうお嬢さん、謎めいた人だ 場合によっては……)」

……………………………………………『確認して申し上げます』⑤

「来たね」

「ええ、綺麗にお食べになさるのですね」

「伊達ではないよ、これって皮肉かな」

「冗談でしょう? それより、私のことが気になるのではないでしょうか」

「それは一体どういう意味だ?」

「そのままですわ 私が何者か知りたいのでしょう?」

「ああ、全部知りたいね」

「あら…でも、ある程度は、わかっているのではないですか? 私がどういった経歴でここに雇われているのか」

「君は、他の人にはない、特別な力を持っている あいつはそういった人間を集めて戦いの道具にする計画に関わっている」

「君は無理やり連れてこられたんじゃあないのか?」

「彼がどういった人間かは理解しているのですね………勉強に来ていると言いました、あれは本当です」

「そして私は、無理やり連れてこられた訳じゃあないんです 『自分から』ここに来たんですよ」

「…そこんところ、詳しく話してくれるのかい?」

「あなたが信用に値する人間かどうか、私には判断できませんが… あの男の味方ではないようですね」

「君だってそうだろ 悪いが、あの男のそばにいた時の君はまるで死人のような瞳をしていた」

「…まだ、あなたは私にとって信用に値するか、わかりません だからひとつ、約束してくださいますか?」

「ふん、聞こうじゃないか」

「いつか、あの男を地獄に落とすと」

「……気に入った!」

「いいんですね…もしあなたが私を裏切ったら、その時は……」

「ならば誓って言う 私にできることがあったら何でも言ってくれ 特に、君の力になる」

「ありがとう、今はあなたを信じます」

……………………………………………『短い時間でしたが』⑥

「私が慎重になっている立場は理解してもらっていると思います そこは本当に申し訳ありませんでした」

「そういうのは大丈夫だよ 時間もないだろうし」

「…いいえ、時間ならまだありますよ…まだあるのだから、別に今日じゃなくてもいいじゃあないですか」

「そうか…それもそうだ いや、私以外にあの男に刃向う人間がいたことが嬉しかったんだ すまない、ちょいと急ぎすぎだな」

「そういうの、大丈夫ですわ 私も嬉しい、だから、秘密のお話もいいですけど、楽しいお話をしにきてもいいでしょうか?」

「…君がそれを望むのなら、満足してくれるかわからないが、そのために努力するよ」

「それでは、私はこれで…また後でお会いしましょうね、お兄さん」

彼女は…ただの村人だった 言葉を持たない生き物と話せるくらい穏やかな力を持った…それでもただの少女だった。

生まれながらにして、魔術的な才能があった それは私の父が欲しがるに値する、ダイアモンドより輝く財宝だった。

彼女の村は、ヤツらに襲われた 彼女は自分のせいで誰かが苦しむこと憂い、自らヤツのところに来たんだ。

…当事者を、彼女を知る人間を生かしておくとは思えないなんて、言えるわけない………彼女は、ヤツに条件を出した。

『あなたの下で働きながら、勉強をさせてほしい』と…彼女はただの村娘であったから、世の中のことを深く知りたかったんだ。

ヤツは…やっと見つけた逸材、それも強大な力を持つ彼女に余計なストレスを与えたくなかったから、彼女の要求はある程度こたえることにしたわけだ。

彼女は…最後までヤツに媚びへつらい、いつか必ず『恩』を返すまいと心に決めていた。

その心は、いつかの穏やかなものではなく、暗く冷たいものだった。

それでも彼女は、私に全て話してくれたんだ、生まれ持った力、好きな食べ物、好きだった秘密の場所…彼女は、いつも話してくれた。

最初は、私の部屋だった…しばらくして、彼女の出入りの自由がなくなるまで、夜中に抜け出してくることだってあった。

今度作ってくるとか、自由になれたら一緒に行こうとか、考えていたのかな。

しばらくしてからだ、マリナの姿を見なくなったのは。

……………………………………………『壊れたマリオネット』⑦

「ご主人、私はこれからどのようにされるのですか?」

「君の潜在的な力を最大限に引き出すだけだよ、それを制御できれば、君はたったひとりの成功例となる」

「そうすれば、君は思いのまま生きることができるんだよ」

「………」

「さっそく始めてくれ、拘束具のロックは確認したな 手順は前回同様、ケーブルを接続!」

「っ…こ、これは?」

「君は何も心配しなくてもいいんだよ 何も感じる必要もない」

「投与しろ」

「うっ!ぐ…ああっ!こ、これは…一体…カラダ…う…」

「サイコパワー、上昇している! これは…超能力の域ではないぞ!」

「これは…『魔術』だ! 人間ではここまでの魔力を保有できないが、彼女は違う!」

「彼女は『人間の魔術師』だ!!そしてその数値は安定して高水準!制御されている!」

「ぐああっくっ…ああああああ!!」

「この状態を保てばいいんだ…その力をいつでも解放でき、精密なまでに制御できる肉体にするには」

「あああああ!!くああああああ!!!」

「所長、被検体の魔力に異常…これは! 数値が大きすぎて、今のマシンではその波を測定できません!」

「なんだと! これ以上パワーを増すというのか! ……なんと!」

「ああああああ!!あああああああああああああ!!!」

「………おお!」

「もうその程度でいい!マシンの制御できる値を大きく超えている!今すぐやめさせろ!」

「や、やっています!しかし、マシンの制御が!」

「ならば強制停止だ!全てオフにしろ!!」

「それでは!ひ…被検体に多大な負荷が!」

「いいからやるんだーーーー!!!」

……………………………………………『呪いの人形』⑧

「私の研究所の…優秀な科学者が三人…死んだ…拘束具は…完璧なものだったのに…」

「君の力は…我々に制御できたものではなかった 一歩のところで私も危険だったのだ」

「………」

「なんとも、言えないか 心身ともに多大な影響…もはや使い物にならない」

「実験は『失敗』だ 実に残念だ…君が希望であったんだがね… だがこうなったら他の被検体を探すまでだ…君は晴れて自由の身だよ」

「う…お…」

「こいつを森にでも捨てておけ…戻ってこないよう遠くにな…くれぐれも取扱いに気をつけろ」

「じ…っけん…は…」

……………………………………………『アリーヴェデルチ』⑨

(彼女は私の前から姿を消した!さよならも言わないで!その理由は!考えられるたった一つの理由は!)

「…お父様」

「………」

「その全身の治療の痕は…一体どうなされたものなのですか…心配です」

「階段から落ちてしまったんだよ…歳は取りたくないものだな 判断する力が鈍っていけない…」

「そうだ、心配ついでに…あのマリナとかいうお嬢さんはお元気でしょうか?」

「………お前の世話をしていたお嬢さんか? 彼女は、ここでの勉強を済ませて故郷に帰ったよ…」

「そうですか ではこの私を彼女のところに案内してもらえませんか …世話になったお礼がしたいのです」

「それなら、お前が気にすることではない 忘れたとは言わせないぞ…お前はこの屋敷から出ることを許されていない」

「そうですか…残念です せめて、さよならは言いたかった」

「ですが…先にさよならを言うべき相手がいるんですよ…」

「………」

「それは!お父様…あなたのことですよ!私はあなたと一切の縁を切る!!」

「どういうことだか、知らないが…これで、厄介事が一つ…片付くワケだな」

「良いだろう、どこにでも行くがいい 何か、餞別として持っていくかね?」

「何かくれるっていうなら……あなたの命をもらう!!」

「愚かな、こういったことを…予測しなかったとでも…思ったか?」

「………」

「超能力は実在する そしてそれを再現することも私達なら可能なんだよ」

「実践投入だ…素晴らしい成果に驚いたか? 貴様の身体はこれっぽっちも動けまい…どれ、貴様に贈る餞別は…」

「貴様が私に向けた刃での!貴様自身の死だーーーー!!」

「うぐっ…!!」

「これで貴様は自由の身だよ…あのお嬢さんのようにね…どこにでも行くがいい もっとも、その傷じゃあ動くのもキビしいかな? …手伝ってやれ!」

「く…くそ……」

「そしてさようなら!」

……………………………………………『新訳「全知全能たる」』⑩

「お似合い…か…こんな場所に…捨てられ…て…何も…出来なか…った…」

「何が超能力…何が血…なんて無様な運命…こんな、優しさのない世界で…彼女は…」

「守れ…なかった…君を…約束を…私…が…弱いから…私が…君のようで…あれば…」

「高貴な血を受け継ぎながら、なんとまぁ無様な姿、それでも人々の上に立つ者ですか?」

「………お…誰…」

「あなたは誰よりも強い…でもー今のあなたは子供より…特に私なんかより弱い」

「私のことなんてお気になさらず あなたは今の存在を殺し、新しい神の器として機能するのです」

「………」

「あなたの心は…悪を正そうとする気高い精神を持っていた…だのに今は、この世界に対する『悪意』…恨みや怒りを抱いてらっしゃる」

「あなたは…生まれながら『悪意』を持つ血族の中で…唯一『善』の心を持っていたのに」

「…血………」

「ですがそれが良いんですよ…ベリーナイスにね…あなたの『血』は神の器に相応しい!!」

「この世の全ての!『悪意』の精神体!!異界の神と言ってもいい力!!この星の頂点!!!」

「私にはできないこと…これは!特異な生まれを持つあなたにしかできないこと! あなたは!」

「人間を超越する!!あなた自身の『血』を生贄にね!!」

「………身体が…軽い…空気に、いや、闇に溶けていくようだ」

「死後の世界か…どんどん身体が浮いて…町中を見渡しているようで…」

「体中に!『不滅のパワー』が行き渡ってゆくぞ!!」

「扉を超えて…誕生した!!新しい神が!!この世界にーーーー!!!」

「その力は『不滅』!!『全知全能』!!! あなたは全ての生物を!!遥か突き抜けて超越したーーー!!!」

「貴様ァ…私に何をしたのかわからんが…感謝しているぞ! 実にスガスガしい気分じゃあないかァああははははは!!」

「人間が神を持つように…悪が神を持ってもいいじゃあないですか 私の役目はこれにて終了といったところ…」

「邪な力を、世界中だけではなく、異界からも呼び出し、世界を混沌の力で満たそうとしただけ」

「その力の使い道は、あなた次第…思うがままに、この世界に邪悪なる混沌を!」

「もはや人間に固執することはない!打ち負かされることだってない!気に食わんものを有無を言わさず支配できる!」

「私の身体を雲のように形成する、溢れるほどの悪意!知性!経験!思い知らせてやる!身勝手な人間共よ!」

……………………………………………『悪意に支配された世界』⑪

その時、世界から大きな争いが消えた。

大きな闇がしばらく太陽を隠し、晴れた頃には、すでに人々の間に悪意と呼ばれる感情は消えていた。

確かに『悪意』が世界を支配していた。

闇が覆った星に、『悪魔』と呼ばれる者たちが実際に現れたのはその時だった。

人間と悪魔の、長い戦いの幕開けだった。

その頂点に君臨していた、『悪意の太陽』は、姿を再び見せることはなかったという。

その姿や御業を、一部の者共は今まで伝えてきたが、至って最近のことにも関わらず、今となっては語る者もおらず、古き神話の一部となっている。

だが、神とされた存在は、今…密かに存在していた。

その存在が誕生し、悪魔が表舞台に登場してから百年以上あとのことであった。

「もう十分だ 最初から満ち足りていたのだ…頂点とは案外つまらんものだ」

「この身体ではどうせ死にたいと思っても死ねんだろうし、死んだとしても天国どころか、地獄に行けるかどうか」

「ふ…はははは! 下らん!今更どうというのだ!」

「………あ」

「ン!…なんだ小汚い小娘…貴様など大して栄養にもならん…とっとと失せろ」

「………」

「どんな目で私を見ようと、貴様に何かくれてやるということはないぞ」

「ねぇねぇ、あなたも、悪魔…なの?」

(こいつ…人間のような姿をしているが、生まれて間もない悪魔か 自分が悪魔として生まれてきたことの実感がないのか?)

「私はお前のような下級悪魔風情と違うのだ…この際だから立場をわきまえておくのだな」

「すごいの?」

「…何をやったらすごいと思うかにもよるが、私にできないことはない」

「じゃあ、えっと…お友達になって?」

「面白い冗談だな」

「できないの?」

「ン…まさか…できないワケでは…ないが」

「じゃあ決まり!お友達になったからーお互いのコトをあだ名で呼ぶの!」

「…私の名前はない、とうの昔に捨てたからな」

「なんで私が欲しいものを捨てられるの?」

「嫌なモノは嫌だったからさ」

「人間は、友達だっているし、名前だってある…それが羨ましいの」

「名前は、その人がその人である証で、友達になったら呼び合うの」

「私は人間だったが、友達なんていなかった」

「じゃあ私が初めての友達だね、お互い様だぁ」

「…こんなちっぽけなヤツと同じ立場になるとはな…小生意気な娘だ」

「それじゃあ私があなたに新しい名前をあげちゃいます」

「なんだいきなり、それに友達になるなんてまだ言ってないぞ」

「なんでもできる人のことを『オールマイティ(全知全能)』と言います」

「………」

「『ザ・オールマイティ』……うーん、ちょっと言いづらいね」

「ざおるまぃてぃ、ざぉるみぃてぃ、ざーるみーてー」

「お前…なかなか面白いヤツだな… 今までお前みたいなのに出会ったことはなかった…」

「私の名前は…『ザルミテ』 これで言いやすい」

「おっ!ほんとだ!ミテ様すごい!」

「自分で導き出しといて略すのか…まぁそれもいいだろう」

「ねぇねぇっ私はー?」

「ふん、そうだな…お前の名前は………」

……………………………………………『メイドの土産』⑫

「私がミテ様のすごさに気づいたのは優しさだったんだ」

「もはや悪魔ではないな 人畜無害、小動物みたいなもんだ」

「家畜を襲おう、お土産にしよう」

UMAみたいだな」

「私がミテ様の専属メイドになったのは、私がいつか出会ったメイドさんに憧れたのと、ミテ様の教育方針だったからだよね」

メイドさんは機械時計のように正確じゃなきゃあいけないからな…ピシっとしてほしかったんだよ」

「どんな人だったっけ…」

メイドさんなんてみんな同じに見えるな それこそ、種族が違うとかしてくれないと」

「ミテ様の真実の目を持ってしても?」

「目がすごいワケじゃない そりゃあ認識はするよ、やってることは同じだろ その点、マインのやることはまったく予想できん」

「ミテ様よりすごい」

「ある意味ね」

「過去の話なんて、どうでもよかったね」

「散々言わせといてそれとは困るな」

「ミテ様も、私も、人間のように刹那的に生きるのが楽しいのです 今を全力投球」

「ミテ様は『不老不死』かもしれないケド、私はそうもいかないんじゃないの? だから楽しいことをいっぱい体験したい」

「それも過去になってしまえばどうでもよくなるんじゃあないか?」

「そういうことでいいと思います 「あくま」で今を生きることです」

「それは、お前のためになることだと私は思うね…だけど最初に言ったこと覚えてる? 反省しなければ…」

「…たまには過去を振り返ってもいいじゃあないですか 前に進めるのなら」

……………………………………………『人形は「二体」いた!』○

「……………ここは」

「ここはどこ…ここは…ワレは一体ダレ…」

(おめでとう!!マリナ!!実験は成功だったんだよ!!)

「この…脳に直接…響くような声は一体…うう」

(マリナ!君のとなりにいるじゃあないか!よくみろよ!)

「我はマリナというのか?女みたいな名前…ん、女か?」

(君の名前は『マリナ・BBBBBBBBB(ナインビー)・イトゥワール』だ)

「ⅨB? とてつもなくステキな名前だが、反重力が働いているお前は一体なんだ」

(我が名は、『浅倉 真理(アサクラ シンリ)』…この物語の主人公さ)

「浅倉さん…って呼ばせてもらうけどいいね お人形さんみたいでキャワイイな」

(照れるぜ でもマリナ…お前もキャワイイぞ♪)

「それにしても、名前がわかっても我が何者かというのはわからない…そこんところどうなんだ?」

(マリナは天才科学者だ 普通の人間では辿り着かない速さで仲間のピンチに駆けつける)

「浅倉さんは元気だなぁ(もっとマシなこと言ってほしいなぁ)」

(オイ、聞こえてるぜ……ってアレ?)

「でもって、科学者…っていうのはどういったことができるのさ」

(劇的に、この草ッ原に家が建てられる やってみろ!)

「ハァー家が建たないかなー!」

(ドジャァ―z__ ン マジにレンガの家!)

「我は…本当に天才なんだなッ!!」

(一握りのな、賢しくて悪いか?)

マリナ(?)の強化実験が実は『大』成功していて、実は生きていたことは、ザルミテを含め誰も知る由がなかった。

そしてこの時代にも、彼女がまったく変わらない姿で存在していることも誰も知る由がなかった。

浅倉さんがフリーダムでも、マリナにしか声が聞こえてないのでそれは読者と二人だけの秘密。

      

              

 

        ロリータ  

       『悪魔メイド♡マインちゃん 不滅の太陽編 終わり』