十月に入ったし、要するにもっと派手にやっていこうというお話!

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(茨城県 某所・・・・・・)

 

 人知れずそびえたつ王城から絶叫にも似た声が聞こえてくる……

 

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「俺の名はジョージ・マックス(仮)!ここの住人であるが、俺を知る者の間では”お絵かき小僧”の名で通っているだろう」

「では本日も、その通り名に相応しい活動をしてくれようではないか───!!!」

 

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(住人を後ろから見つめる客人たち)

客人L「そんなこと言って、いつになったら次の絵が上がるんですかね これではモデルの私も帰るに帰れない、というか帰っていいですか」

客人J「センセェーも同感ですね」

住人(仮)「え…?次の……え??なにそれ……」

この王城では住人であるジョージ(仮)が、客人をモデルに日常風景や様々な交流を描くことを約束していた。期限は設定されていないが、常識的に考えれば遅いとわかる。

 

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(威嚇する客人L)

L「そういう約束でしょう!前の流れから繋がる、次の交流をする私の絵です!人を待たせておいて筆を執るどころか遊んでばかりいるじゃないですか!」

仮「えーバレてましたか……いやボクもやりたいのはヤマヤマというか…… やらなければという思いではいるんですけど?絵はちょっと……ね?」

L「絵を描かないで何が”お絵かき小僧”なんです!あなたから”絵”を取ったら何も残らないんですよ!!」

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J「まぁまぁ!ルミエちゃんここは一つ(仮)クンの言い分も聞いてみてあげようよ」

L「”ちゃん”づけ止めてください」

J「だってキャラシートにそう書いてあるんだもん……」

客人Jは”これでも”教師なので、客人といえどもニュートラルなポーズだ。

 

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(ここ数ヶ月間で積みあがった未消化タスク)

L「……一応聞いてあげますけど、どうして絵を描かないんです?」

仮「やりたい話じゃなくて……」

 

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(暴力的な表現)

L「”やりたいか”どうかじゃなくて”やる”って言ったのはアナタでしょうが!!」

仮「うわああああーーーーー!!!!わかりましたよ!ちょっと良いですか!!」

L「なんだ、言ってみなさい」

 

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仮「ボクはルミエさんにはいっぱい酷い目にあってほしいし!簡単に友情とかを育んでもらいたくないんですよ!仲の良い親御さんのコと少ししんみり……だけど温かい、みたいな!そんなのは馴れ合いであって真の友情じゃないと思うんですよボクは!」

「何か困っているなら助けてやるか、ではなく時には突き放したり課題を与えることで”自立”して……受け身ではなく自らが考え行動することで真の友情となり!問題に協力して立ち向かえると思うんですよ!」

 

 

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L「そこまで考えてるなら描きなよ」

仮「いやホント、マジでそれ……最近はちょっと心身ともに疲弊してまして、ようやくこうして近況報告できるようになったんですよ……あとツイッターも見る気おきなくて……」

L「……自分の絵を見返してヒドイと思ったら改善の努力が必要だし、伝えたいと思ったことがあったら直接伝えたほうが良いと思うけど」

仮「ボクそんなこと思ってないんですけど……いや、やっぱり思ってます……」

 

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仮「もろもろの事でもし、もどかしい思いをさせてしまったのなら申し訳ありません 今回はこの場を借りての言葉とさせていただきますが、今後は何か心境や近況、その他悲鳴の類やネタ画像などを不定期に更新していけたらと思います」

 

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L「というか、ここで交流とかしちゃえばいいんじゃないの?」

仮「面白そう……」

 

 

ということでここ一週間でたまってしまったボツ絵とかのコーナーです

 

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(コスプレネタですが、版権モノの扱いってどうだったっけ……という間に文化祭が終わってました)

 

 

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(当初予定されていた展開の一部……なんだかんだで仲良しになる予定でしたが、イイ感じになってほしいと思うので頑張ります なすのちゃんすき)

 

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(あとはまぁ……)

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(こんなシーンがあったり……)

 

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(ちなみにボクの中で忍者と言ったら『おぼろ○』ですね 青山先生)

 

そんな感じです……。

本当はもう少し込み入った感じだけど、交流のことを忘れたことは一度もないですよ!

 

交流ネタのまとめとか、ネタに対するコメントもしていきたいですね。

それでは今後ともよろしくといったところで……またお会いしましょう!

 

(最近アニメ『キ○肉マン』(王位争奪戦編)を見ています……)

 

疑念体ストーリエ 序編

ジリジリジリ、ジージージー
ジリジリジリ、ジージージー

止みそうにない夏の声。

ジリジリジリ、ジージージー
ジリジリジリ、ジージージー

額から流れる汗が、目に染みる。

不意に閉じた瞳を開く私は、きっとそこにいた。

空っぽの石棺、投げ捨てられた願いのカタチ、絡み合う緑の指。
その真ん中に私。

その中で私はきっと、小さな小さな何かの一つだったと思う。
それでも、私は他の何かみたいになることができなかった。

小さな、小さな何かでも、大切な何かになれているというのに私は。

 

 

…………………

 


“ヘイセイ”最後だとかいうの夏は、例年と変わることなく過ぎてゆく。
憎いほどに晴れた空、痛みさえ覚える日差し、そして心地よささえ感じるような暑さ。
ぼくにとってはそれが夏のすべてだ。

ぼくは『ユニ』。
『具象思念』、あるいは『思念体』にカテゴライズされる存在。
早い話は、感情を糧に成長する霊的なモノだ。

ぼくにとっては、満ち足りてない状態こそが本来の状態だ。
愛する者の温もりを知らず、吐きだすほど飲み込むことを知らない、それが普通。

だけれど、困ったことにそれは『何もない』というわけではない。
喜びや怒りが積もるように、不満足というのも積もるものなんだ。

それは貯めておくことができないということで、積み上げたものはいずれ崩れてしまうという意味。
どうしても不満を吐き出さずにはいられない。

だから、今日も存在意義に反する快楽に身を委ねるため行動しなければならない。
言い忘れていたが、ぼくの存在意義は『不足感』にある。


この場所はぼくのような『思念体』が住処を求めて作った虚栄の町。
つまりは廃墟だが、我々のようなオバケには何かと必要なものが揃っていると思う。

同族との交流も盛んで、不思議なほど互いを認めることができている。
だが、実際には互いが互いを天秤にかけ、互いに足を引っ張り合っているようにも見える。
ぼくらに足という部位は存在しないが。
ゆえに他者を見る目は非常に慎重だ、何せ相手が何をしでかすのかわからないから。


町を徘徊するぼくが今日最初に出逢ったのは『物欲』の思念体だった。
「む」

この思念体は口数が非常に少ない。
というより、「む」としか発することができないようだ。
実際、意思疎通は不可能だと思う…が、懐柔することは困難ではない。

だが、ぼくはこのような手合いは大の苦手だ。
ぼくは(一方的な)会話を好む、口が利けないような相手と話しても空しいだけだ(個人の感想です)。
さらに言えば、この生物は欲深いことで有名であり、欲しいと思ったものを無尽蔵にしまい込むと聞いている。

思念体は大雑把に“喜怒哀楽”のような『感情系』、“物欲”や“愛”などに代表される『欲望系』、“違反”や“夢”といった『概念系』の三つに分けられる。
ぼくとこいつは同じ『欲望系』であり、つまりは似た者同士なのだ。
何が言いたいかというと、自分のことしか考えていないようなヤツといるとストレスが溜まる。

ぼくは当初の目的を達成するために、『物欲』の脇を素通りすることに決めた。

ヤツの側を通り抜けると、ぼくに微塵も興味がないようで、振り返ることもなかった。
鼻につくような酸っぱい残り香が妙に印象に残った。

 

 

…………………


「……それで、私のところに来たの~?」
「違うっ…た、たまたま通りがかったんだよ」

寝ぼけマナコを擦って、私は迷子の方を向く。
この迷子は私に縁深いので、全くの他人だと感じられない。
「そんな風に壁を作っていくから、私くらいしかあなたを理解してあげられないのよ」

「ぼくの何を知っているんだよ」
伸ばした指先を振り払って、不満そうに言った。
この子が求めているモノはこういった『反応』だ。

「だって、あなたが他の誰より私と一緒にいるから…他の誰よりもあなたを知っているのは、当然でしょう?」
私は一つ、ため息を吐いた。
ため息を吐くと幸せが逃げると言うけれど、あながち間違いでもないとその時は感じた。

『ユニ』は、何も答えない。
この子は普段、誰よりも好き勝手に振る舞っているのに、いつからか、私の前では大人しい。
それは、彼(?)自身が好き勝手でいることを望んでいるワケではないから。
本当は誰かのことを『好き』でいたいんだ。

そんなユニのことを私はどうしても放っておくことができず、ついには甘やかし、受け入れてしまう。
そうしなければ、彼の中からその想いが失われてしまいそうに思えた。

「お前は、ぼく以外とだったら誰と一緒にいるんだよ」
「えっ?あ…お、お前なんて言うものじゃありません!私は『ポリ』お姉さん!」

不意を突かれた言葉に、つい声が裏返ってしまう。
何より驚いたとともに、彼自身も私のことを理解していると感じたことに衝撃を受けていた。
私は、何をやっているんだろう?…一瞬でも、そう感じるように思った自分が、こんなにも情けない。

 


私は『ポリ』。
思念体、性質は『充足感』。

私は天秤。
私自身はきっと、満ち足りてなんかいないのかもしれない。
誰かの幸せこそ、私が存在を作る糧になるから。

愛なき者に温もりを、飢えに苦しむ者に施しを与えるのが私の存在する理由。
だけれど『なんでもある』から、そうしているわけではないの。

きっと私は、『何もない』。
だから私は、『誰でもない』。

『誰でもない自分』のために、必死になって誰かの側に寄り添っている。
そうするしかない、そうすることでしか『生きる』ことができないから。

何かを奪うことでしか生きていくことができない―――。
そんなユニの力になれるなら、『誰でもなくて構わない』、そう思っていたのに。

「ポリ?」
私の顔を覗くユニの表情は、不安に駆られているように思えた。
そうだ、ユニにこんな表情をさせてはいけない。

「も、もう!こんな暗い部屋では気分まで暗くなるわね!外食に行きましょ!」

 

 

…………………


ぼくとポリが寝床から飛び出し、伸びをしようと思った時。
外はやたら騒がしく、何人かの思念体が声を掛け合って何かを探しているようだった。

別段、食事は落ち着いたものでなくても良いが、邪魔をされるのだけは真っ平ゴメンだ。
「なんの騒ぎだよ」

ぼくの質問に答えるため、『怨み』の思念体が近づいてきた。
「なんだ?とはこっちのセリフだ!邪魔するんじゃねぇ!」

なんか、質問に答えに来たという感じではなかった。
よく見ると他の思念体もやたら攻撃的な面子ばかりに思える。
「ぐ…う…悪かったよ」

「ああ?…念のため訊いておいてやるが、お前らは『キツネみてーな』思念体を見たか?」
キツネみたいな思念体…?
思念体は煩悩の数ほどいると聞いたことがあるが、それでもそのような外見の思念体の話は全く聞かない。

ポリに聞いてもわからない。
「キツネ…ごめんなさい、ちょっと見たことがないわ」
「そのキツネが、どうしたんだ?」

「そいつにはなァ、みんな迷惑してるんだよ…食い逃げやタカり、貸した金が返ってこないとか色々」
『怨み』の思念体は握りこぶしを作って震えている。
どうやら金を貸してやったらしい、見かけによらないものだが。

「これほどの人数で探しても見つからないなんて、特殊な能力で逃げているのですか?」
「実は、そいつは『思念体であって、思念体ではない』という見方が強まっている…だから」

そう言うと彼の握りこぶしが地面に打ち下ろされる。
「だから厄介なんだよ!見た目は完全に俺たちと同類なのに!」

「思念体であって…思念体ではないって、どういうことだ?」
「……『イハン』や『プロト』によると…感情を糧に生きるが、思念体とは別存在だと…」

『怨み』の思念体は溜息を一度吐くと、怨みの表情で再び顔をあげる。
「とにかく、そいつを見つけたら俺にも一撃いれさせろ!」

彼を含めた思念体達は次々とこの場を離れ、そのよくわからない思念体を追いかける。
騒がしかった町の一角が、再び本来の静けさを取り戻した。

蝉の鳴き声だけがやたらと響いている。

 


…………………


痛い。
痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い!

どうして私『だけ』がこのような目にあわなければいけないのだろう。

あの変な生き物は思いっきり噛みつくし、金髪のヤツには銃で撃たれるし、黒っぽいヤツにはやっぱり撃たれるし…。
どうして?どうして私だけなの?

 


最早、周りなんて見えない。
ここがどこで、どんな匂いのする場所なのか、感じるような余裕はない。
じっとりとした手の感覚が、不快感だけを加速させる。

まるで、肺に穴が開いているようだ。
ああ、それもあながち間違いじゃないのかもしれない。

追い詰められたら、誰でも感傷的になるもので、この町に来た時のことを思い出していた。


だけど、追跡者は物思いに耽るような時間も与えてくれない。


「こんなところにいたんだ…じゃあ、死ね」

私は、潰れた喉から必死に音を出すことを試みた。


どんなに叫んでも、意味のある言葉にはならなかった。

どんなに強く訴えても、誰の心にも響かなかった。

どんなに、どんなに許しを乞うても。

 

 

私はそれっきりだった。

 

 

 

…………………


「天才である!!この私が!!何度でも説明してやろう!!!!!!!」


私とユニは趣のある食堂に来ている。
そこでなんとも、なんとも言い難い人物と出くわした。
天才を自称する彼女は『探求心』の思念体。
先ほどの『思念体(偽)』の話題で名前が挙がった、『プロト』さん…だとか。

「まず、最近我々の間で厄介なことになっている存在は、思念体と非常に似ている
 私はこれが、思念体と同じ製造過程を経て誕生し、同様に機能しているものと考えた」
「おまちどうさま」

話の腰を折るというのはこういうことを言うのだが、料理を運んできたのはこの食堂の店主だ。
しかし、プロトさんは提供されたナポリタンを啜りながら器用に話の続きをし始めた。

「では、どのような部分が思念体と異なっているのか…というところだが、思念体を形成する情報は単純であることが多い
 強く一般的な想いほど形になりやすいゆえにな、だが今回のそれらを形成する要素は複雑かつ微弱、さらには非常に限定的である」

プロトさんについて私は深くを知らない。
聞くところによると思念体について専門的に詳しいのは彼女を数えて、片手の指で数えるほどしかいないらしい。
さらに言えば、彼女の知識は実践に基づいた結果であり、まさにこの分野では権威であると言える。
その偉大なる叡智はもっぱら七面倒なことに使われる。

「ご飯が冷めるぞ」

そう言うユニの声は、私に響かない。
興味深い内容だったので、つい彼女の講義(大きすぎる話し声)に気を取られている私。

彼女…プロトさんは、今回の騒動で浮上した容疑者のことを『疑念体』と名付けた。
疑念…ある物事が真実であるかどうかについて、心に生じる疑い。
さしずめ、思念体とするには疑わしい存在だということなのだろう。

語る言葉が白熱してきたところで、彼女の助手らしき思念体が来店すると彼女に何かを耳打ちする。
するとプロトさんは高らかな笑い声を挙げ、あれほど無理にナポリタンを啜ったというのにシミ一つ付いていない白衣を翻し、二人はどこかに去って行った。
清々しい無銭飲食だ。

そんな清々しさと裏腹に、私はなんとなく自分に見通しがつかない。
私の意識から何故、プロトさんの言う『疑念体』という存在がちらついて消えないのか。

 


自分が被害者になるかもしれないから?


未知の存在に対する憧れ?


知的好奇心?

 


どれも、収まりがつくような理由ではない。

 


…………………


「ぼくの話を聞け、聞いているのかポリ」

ぼくの声に自己を取り戻したポリは、気まずさを紛らわすように皿の上へ落としたフォークを握る。
苦笑いを浮かべながら焼きうどんを啜る彼女の表情は、笑顔とは呼べぬものだ。

その表情にぼくは、『不足感』とは違う、それでも近いような感覚を覚えていた。

「あ…えと、そうだ。隣町の動物園でカワウソの赤ちゃんが産まれた話だったわね」
「いや、違うだろ」

 


「うん、違うね。このお店にギネス級の臭いを放つ缶詰が入荷されたという情報は確か?」
「お前の気は確かなのか?」

 

 

「そだね、確かにね、うん。ちょっと、そうだったかもね。私的には~…うん、そう…心が~ここに…在らずというか」

ぼくは、ぼくの中に芽生えたこの、不可解な感覚の正体を掴めずにいる。
原因を知っている、きっとポリだ。

でも彼女は ぼくに何もしていない、彼女をこんな風に変えてしまったのは、ぼく?


ぼくが、彼女を“頼る”ようなことをしたから?
普段から、多くのものを彼女から“受け取っていた”から?

 


違う、違う。
壁を、彼女は ぼくとの間に壁を作っている。
悪いのは…ぼくじゃない。

自分の勝手で、壁を作っているんだ。


「いいよ、わかった」

 


思えば、ずいぶんと不自由をしていた気がする。


彼女のそばでは、言いたいことが言えないでいた。
いつもは感じたことも、思ったことも全て、しまい込むようなことをせず言えたのに。

 


彼女のそばでは、何も求めることができなかった。
一つのことじゃ足りなくて、キリがないはずなのに、彼女の全てを奪ってやることだけはできなかったから。

 


ぼくは彼女に、ぼくがぼくであることを取り上げられていたんだ。

「ぼくは もう“君”から何かを受け取らない」


「え?」


「君とはもう関わらない、そう言っているんだよ」

「…ごめんなさいユニ、私ちょっと」

「うるさいな!!ぼくは、ぼくなんだよ、好きにさせてよ!」

 

 

『ありがとうユニさん、またどうぞー。』

 

 

…………………


「ユニ!」

私はユニを追って、店を出た。
見渡しても、どこにもいない。
気配を探っても、存在を認めるには遠すぎる。


何度、自分を責めているのか、わからない。
それさえも、自分可愛さの感情だと思えて胸を掻きむしる。


寝床を出るとき、私は確認して、気を張った。
彼女を傷つけてしまわないよう。
それなのに、私は。

 


少しでも、ほんの少しでも『通じ合えている』気がしていた。

“だって”私達は、決して交わることのない間柄だったから。
傷の深さだけ お互いを知って、やっと許し合えるようになったんだもの。


だけれど、思い知った。


誰でもない私を、あの子が知るはずもなかったんだ。

「ふ……ふふ」

笑いがこみ上げてくる。
可笑しくて、可笑しくて仕方がない。

「『誰でもなくて構わない』だって?そんなワケないじゃないの!」

 


……とにかく、ユニを探さないと。
私が呼吸と思考を落ち着けていると、何やら物音がする。
死角から看板のようなものが、がしゃんと音を立てて倒れ、壊れた。

音のした方向に顔を向けると、そこには『キツネの耳が生えた帽子』を被った思念体がいて、こちらを見ている。
私は、これが件の疑念体であることを瞬時に察知した。
「あ、あなたは」

見知らぬ彼女は傷だらけで、それを差し引いてもどこか弱弱しく、ただその長い金髪は土埃に汚れてなお魅力的に感じた。
揺れる長髪からは香水の匂いか、酸っぱい葡萄のような危ない匂いがする。
彼女はこちらに向かってくると私の前で立ち止まり、呟くよう言葉を発した。


「助けて」


沈黙の間が続き、睨み合うように見つめていた。
それが一瞬の時だったのか、耐えがたいほどの時だったのか、見当がつかない。
苦痛にも似た時間は、彼女が私に倒れ掛かったことで終わりを告げた。

 

 

なんとなくだが、この人物は“詐欺師”という言葉が相応しいようにも思える。
初対面の人物をこう評するのは失礼極まりないのだが、風貌や佇まいは驚くほどに親しみやすく、驚くほどに弱い。
彼女の言葉をそのままの意味で受け取り、自ら手を伸ばしてあげることもできなかったのは、そう思ったからだ。
心の内では全てを奪ってやるとか、得をしたいという感情にある…根本的な部分ではあの子と同じ。


だとしたら、彼女は。

 

 

…………………


今回はここまで。
次回は『疑念体ストーリエ 中編』(仮題)

このお話は三部構成です。
実在の人物・団体・思念体とは無関係です。

 

 

 

悪魔メイド♡マインちゃん エピソード1 不滅の太陽編 再放送

『超越する者』①

太陽は人々に、生命の輝きを与え、邪な者を清める。

永遠とも思える時間に存在していたそれ、太陽の死は、一つの生命の時代が終わりを告げる頃だと、私は思う。

だが、決して滅ぶことのない、そして邪な者に深い闇を与える、「悪意の太陽」が存在していた。

それは、闇の中でも輝きを放ち、光にさらされても燃え続ける、不滅の太陽だった。

その瞳は吸い込まれるような真紅、たちまち見つめ合う者の心を奪い、その存在なくして生きられないとさえ思わせる。

我々が太陽がなければ生きられぬよう、希望を失いかけて天を仰ぐよう、闇に巣食う者のカリスマとして君臨する。

その闇はやがて世界を覆い尽くし、悪がこの星を支配するのも夢ではない。

そのような力を持っているのに、その存在は辺境に姿を隠し、悪魔の子達と共に、静かに暮らしていた。

「ミテ様、お紅茶入りましたー」

俗に言う、メイドの衣装を身にまとった幼子が、紅茶の入ったカップを運びながら、そう言う。

「ありがとう、マイン…お前もなかなかメイドが様になってきたんじゃあないか?」

金色の長髪の男がメイドの運んできたカップを受け取る。

「えへっそうですかぁー? これもメイドさんのお友達のおかげですかね?」

「永い時を生きる悪魔が、いつまで泣き虫のままでいるかと思っていたが」

「ミテ様はいつもそう言う! 悪魔だって成長するんです」

全ての悪魔、生物の頂点、星の支配者として、生まれたはずだった、この男の今の名前は「ザルミテ」。

そしてそのメイド、「インプ」という下級悪魔の子供(?)、名前は「マイン」という。

どちらも人の形をとってはいるが、その存在は人間に害なすものであり、その姿も真の姿ではない。

ザルミテに至っては真の姿は存在せず、何千何万何億、あるいはそれ以上の姿を持ち、どのような存在にでもなれる。

よりによって彼らは「人間」に近い姿で午後の紅茶(アフタヌーンティー)を嗜んでいる。

この異様な状況だが、ザルミテは元々は高貴な生まれの人間であった、その時の習慣だと言っている。

ただの人間が、人間を、全ての生物を超越する力を得た…とても信じられない、おかしな話だ。

「人間は成長するもの…と、誰かは言ったが、成長せず姿を変えない生き物などいるのか? いない…悪魔に成長はないんだよ」

「だから私は、人間の子供に近い姿をしているんです…何年もこの姿でも、精神的に強くなっていますって」

「ちょっとからかっただけだよ 精神の成熟を成長とすれば、いつまで経っても成長しない人間だっている だがマイン、お前は成長している……」

「なんですかーそれ! それでも紳士ですか!」

「なにを言っているんだお前は」

……………………………………………『人間の成長』②

彼がそのあまりにも強大な力を得た過去に、弱さがあった。

遡れば、何世紀も前になる。

彼の生まれは、ある領主の息子だった。

彼の父は邪悪であったと、彼は感じていた。

彼の父は当時、祖国が戦争をするというときに、超常的な力を持つサイキッカーの研究に携わっていた。

どういうわけだか、国は超能力を欲していた、最先端の戦争技術と並んで。

その研究は、人の身体ばかりではなく心まで壊し、誰も辿り着いたことのない世界を見るための探求だったから、多くの間違いや行き過ぎた行為が悲劇を呼んでいた。

父はサイキッカーの素体となる人員を集める立場にいた。

その男は小さな村でさえ見逃すことなく、徹底的に素質ある者を探させた。

反抗する者がいる村を焼くことだって簡単にする男だった。

彼は、父に優しくしてもらったり、父だと思ったことはなかった。

微かな記憶の奥にいる、母親も、この男に食い潰されたと思うと、怒りを超えて感覚が麻痺してしまいそうだった。

ただ、絶対に報復してやると誓っていた。

この邪悪の首を、誰よりも先に絞めて殺すのは自分だ、こいつのために誰かが不幸になるのを止めるのが自分の生きる意味だと。

彼の心は冷え切っていた、すでに暗い闇の底にあった。

「私は………人間が過ちを繰り返し、それでもその過ちを認め、強くなれると信じている…人間だった頃には考えられなかったことだが」

「過ちの数だけ、強くなれるのだ、そして二度と繰り返さない力を手に入れるんだよ」

「マイン、お前は私のそばで過ちとは無縁に生きてきたな…お前は強くなくてもいいんだよ」

「私は、ミテ様のそばでたくさんのことを知りました、言葉遣いとか、美味しい食べ物とか、変化(へんげ)の仕方とか」

「私は幸せな悪魔です ミテ様は私の全てを知っている…悪魔の私に、触れ合える温もりを教えてくれたお方」

「でも、まだ知りたい 私はまだミテ様の全てを知らない、愚かなことかもしれませんが、あなたの全てを知りたいと思ってしまう」

「…私は、お前を人間のように育てていた…自分の子供のように、知らないうちに…まだ一人前と認めていないがね」

「だがまるで、永遠を誓い合った恋人のようなことを言う、子供の言うことじゃあないな」

「いけませんかね? 悪魔に魂があるなら、私の魂はあなたに捧げたものなんです」

「…おい、ちょっと待ちな…ん?なかなか素敵だが…こういう仕草を教えた覚えはないな」

「んー?…えっおっんん? 私、何か恥ずかしいことしてますか?」

「…いや、気にしなくてもいい それがマイン、お前の本当の姿だからな…」

「ええっと、なんだっけ 知りたいのは私の過去だっけ?」

「…ああ!そう言えばよかったんですね!そうです!聞きたい!」

「言っておくが面白い話じゃあないぞ 滑稽という点では当てはまるが…決して愉快でも痛快でもない」

「お前の好奇心を尊重して聞かせてやるが、話すのはお前だけだ …私の弱さだからな」

「問題ありませんよ 私はあなたの全てを知りたい…私の全てを知っていて、受け止めてくれるあなたのように」

……………………………………………『最も古い記憶』③

「お父様」

「どうした『 』…珍しいではないか…お前が顔を出すなんて」

「その少女は……」

「……私の新しい友達だよ…せっかくなんでお前にも紹介してやろうかな…ん?」

(こいつの新しい実験台か…傷一つないが他の人形共とは違うのか? 生きた心地のしていない目をしやがって…)

「初めまして、お嬢さん 私の名は『 』と申します お名前をお聞かせください」

「初めまして、お兄さん 私は…『マリナ』と呼んでください」

「…フン、仲良くできそうだね…何も用がないのなら自分の部屋に戻っているんだな」

「わかったよ、父さん」

「なんだと?」

(本当の父と子なら、これくらいの会話をするんだろうな こいつは私にまるで関心を持っていない)

「…どういう風の吹き回しか知らんが…気に食わんことを言うようになったものだな」

「…ご主人、息子さんとは」

「次に息子の話をしたらお前が特別であっても罰を与えることにする、わかったかね?」

「わかりました……」

……………………………………………『夕食前の無駄話』④

「『 』さん、お夕飯を運びに参りました」

「ん…マリナさん…だったか いいよ、そんなの召使いがすることだろう」

「いえ、そのような認識で構いません 今日からお世話になります」

「そうか、こちらこそ」

「では、私はこれで…しばらくしたら片づけに」

「あ、ちょっと待って」

「はい?」

「この家に、マリナさん…あなたのような年頃の女性がこの家に入ることはなかった、それはいかなる理由でも、だ」

「………」

「召使いは、間に合っているし、特に私のような厄介者に割く人員は少数…それなら、父の」

「私は、勉強に来ています」

「…なんだって?」

「彼は私を気に入ってくださったのです だから、私が望む物を与えてくださるのです」

「君は…一体、父の、あの男のなんなんだ?」

「あなたは本当に、あの人とは疎遠なのですね」

「おい、ちょっと待ってくれ 話はまだ途中だろ」

「ふふ、お料理が冷めてしまいますよ また後で、お話を聞かせてくださいね」

「(マリナ…とかいうお嬢さん、謎めいた人だ 場合によっては……)」

……………………………………………『確認して申し上げます』⑤

「来たね」

「ええ、綺麗にお食べになさるのですね」

「伊達ではないよ、これって皮肉かな」

「冗談でしょう? それより、私のことが気になるのではないでしょうか」

「それは一体どういう意味だ?」

「そのままですわ 私が何者か知りたいのでしょう?」

「ああ、全部知りたいね」

「あら…でも、ある程度は、わかっているのではないですか? 私がどういった経歴でここに雇われているのか」

「君は、他の人にはない、特別な力を持っている あいつはそういった人間を集めて戦いの道具にする計画に関わっている」

「君は無理やり連れてこられたんじゃあないのか?」

「彼がどういった人間かは理解しているのですね………勉強に来ていると言いました、あれは本当です」

「そして私は、無理やり連れてこられた訳じゃあないんです 『自分から』ここに来たんですよ」

「…そこんところ、詳しく話してくれるのかい?」

「あなたが信用に値する人間かどうか、私には判断できませんが… あの男の味方ではないようですね」

「君だってそうだろ 悪いが、あの男のそばにいた時の君はまるで死人のような瞳をしていた」

「…まだ、あなたは私にとって信用に値するか、わかりません だからひとつ、約束してくださいますか?」

「ふん、聞こうじゃないか」

「いつか、あの男を地獄に落とすと」

「……気に入った!」

「いいんですね…もしあなたが私を裏切ったら、その時は……」

「ならば誓って言う 私にできることがあったら何でも言ってくれ 特に、君の力になる」

「ありがとう、今はあなたを信じます」

……………………………………………『短い時間でしたが』⑥

「私が慎重になっている立場は理解してもらっていると思います そこは本当に申し訳ありませんでした」

「そういうのは大丈夫だよ 時間もないだろうし」

「…いいえ、時間ならまだありますよ…まだあるのだから、別に今日じゃなくてもいいじゃあないですか」

「そうか…それもそうだ いや、私以外にあの男に刃向う人間がいたことが嬉しかったんだ すまない、ちょいと急ぎすぎだな」

「そういうの、大丈夫ですわ 私も嬉しい、だから、秘密のお話もいいですけど、楽しいお話をしにきてもいいでしょうか?」

「…君がそれを望むのなら、満足してくれるかわからないが、そのために努力するよ」

「それでは、私はこれで…また後でお会いしましょうね、お兄さん」

彼女は…ただの村人だった 言葉を持たない生き物と話せるくらい穏やかな力を持った…それでもただの少女だった。

生まれながらにして、魔術的な才能があった それは私の父が欲しがるに値する、ダイアモンドより輝く財宝だった。

彼女の村は、ヤツらに襲われた 彼女は自分のせいで誰かが苦しむこと憂い、自らヤツのところに来たんだ。

…当事者を、彼女を知る人間を生かしておくとは思えないなんて、言えるわけない………彼女は、ヤツに条件を出した。

『あなたの下で働きながら、勉強をさせてほしい』と…彼女はただの村娘であったから、世の中のことを深く知りたかったんだ。

ヤツは…やっと見つけた逸材、それも強大な力を持つ彼女に余計なストレスを与えたくなかったから、彼女の要求はある程度こたえることにしたわけだ。

彼女は…最後までヤツに媚びへつらい、いつか必ず『恩』を返すまいと心に決めていた。

その心は、いつかの穏やかなものではなく、暗く冷たいものだった。

それでも彼女は、私に全て話してくれたんだ、生まれ持った力、好きな食べ物、好きだった秘密の場所…彼女は、いつも話してくれた。

最初は、私の部屋だった…しばらくして、彼女の出入りの自由がなくなるまで、夜中に抜け出してくることだってあった。

今度作ってくるとか、自由になれたら一緒に行こうとか、考えていたのかな。

しばらくしてからだ、マリナの姿を見なくなったのは。

……………………………………………『壊れたマリオネット』⑦

「ご主人、私はこれからどのようにされるのですか?」

「君の潜在的な力を最大限に引き出すだけだよ、それを制御できれば、君はたったひとりの成功例となる」

「そうすれば、君は思いのまま生きることができるんだよ」

「………」

「さっそく始めてくれ、拘束具のロックは確認したな 手順は前回同様、ケーブルを接続!」

「っ…こ、これは?」

「君は何も心配しなくてもいいんだよ 何も感じる必要もない」

「投与しろ」

「うっ!ぐ…ああっ!こ、これは…一体…カラダ…う…」

「サイコパワー、上昇している! これは…超能力の域ではないぞ!」

「これは…『魔術』だ! 人間ではここまでの魔力を保有できないが、彼女は違う!」

「彼女は『人間の魔術師』だ!!そしてその数値は安定して高水準!制御されている!」

「ぐああっくっ…ああああああ!!」

「この状態を保てばいいんだ…その力をいつでも解放でき、精密なまでに制御できる肉体にするには」

「あああああ!!くああああああ!!!」

「所長、被検体の魔力に異常…これは! 数値が大きすぎて、今のマシンではその波を測定できません!」

「なんだと! これ以上パワーを増すというのか! ……なんと!」

「ああああああ!!あああああああああああああ!!!」

「………おお!」

「もうその程度でいい!マシンの制御できる値を大きく超えている!今すぐやめさせろ!」

「や、やっています!しかし、マシンの制御が!」

「ならば強制停止だ!全てオフにしろ!!」

「それでは!ひ…被検体に多大な負荷が!」

「いいからやるんだーーーー!!!」

……………………………………………『呪いの人形』⑧

「私の研究所の…優秀な科学者が三人…死んだ…拘束具は…完璧なものだったのに…」

「君の力は…我々に制御できたものではなかった 一歩のところで私も危険だったのだ」

「………」

「なんとも、言えないか 心身ともに多大な影響…もはや使い物にならない」

「実験は『失敗』だ 実に残念だ…君が希望であったんだがね… だがこうなったら他の被検体を探すまでだ…君は晴れて自由の身だよ」

「う…お…」

「こいつを森にでも捨てておけ…戻ってこないよう遠くにな…くれぐれも取扱いに気をつけろ」

「じ…っけん…は…」

……………………………………………『アリーヴェデルチ』⑨

(彼女は私の前から姿を消した!さよならも言わないで!その理由は!考えられるたった一つの理由は!)

「…お父様」

「………」

「その全身の治療の痕は…一体どうなされたものなのですか…心配です」

「階段から落ちてしまったんだよ…歳は取りたくないものだな 判断する力が鈍っていけない…」

「そうだ、心配ついでに…あのマリナとかいうお嬢さんはお元気でしょうか?」

「………お前の世話をしていたお嬢さんか? 彼女は、ここでの勉強を済ませて故郷に帰ったよ…」

「そうですか ではこの私を彼女のところに案内してもらえませんか …世話になったお礼がしたいのです」

「それなら、お前が気にすることではない 忘れたとは言わせないぞ…お前はこの屋敷から出ることを許されていない」

「そうですか…残念です せめて、さよならは言いたかった」

「ですが…先にさよならを言うべき相手がいるんですよ…」

「………」

「それは!お父様…あなたのことですよ!私はあなたと一切の縁を切る!!」

「どういうことだか、知らないが…これで、厄介事が一つ…片付くワケだな」

「良いだろう、どこにでも行くがいい 何か、餞別として持っていくかね?」

「何かくれるっていうなら……あなたの命をもらう!!」

「愚かな、こういったことを…予測しなかったとでも…思ったか?」

「………」

「超能力は実在する そしてそれを再現することも私達なら可能なんだよ」

「実践投入だ…素晴らしい成果に驚いたか? 貴様の身体はこれっぽっちも動けまい…どれ、貴様に贈る餞別は…」

「貴様が私に向けた刃での!貴様自身の死だーーーー!!」

「うぐっ…!!」

「これで貴様は自由の身だよ…あのお嬢さんのようにね…どこにでも行くがいい もっとも、その傷じゃあ動くのもキビしいかな? …手伝ってやれ!」

「く…くそ……」

「そしてさようなら!」

……………………………………………『新訳「全知全能たる」』⑩

「お似合い…か…こんな場所に…捨てられ…て…何も…出来なか…った…」

「何が超能力…何が血…なんて無様な運命…こんな、優しさのない世界で…彼女は…」

「守れ…なかった…君を…約束を…私…が…弱いから…私が…君のようで…あれば…」

「高貴な血を受け継ぎながら、なんとまぁ無様な姿、それでも人々の上に立つ者ですか?」

「………お…誰…」

「あなたは誰よりも強い…でもー今のあなたは子供より…特に私なんかより弱い」

「私のことなんてお気になさらず あなたは今の存在を殺し、新しい神の器として機能するのです」

「………」

「あなたの心は…悪を正そうとする気高い精神を持っていた…だのに今は、この世界に対する『悪意』…恨みや怒りを抱いてらっしゃる」

「あなたは…生まれながら『悪意』を持つ血族の中で…唯一『善』の心を持っていたのに」

「…血………」

「ですがそれが良いんですよ…ベリーナイスにね…あなたの『血』は神の器に相応しい!!」

「この世の全ての!『悪意』の精神体!!異界の神と言ってもいい力!!この星の頂点!!!」

「私にはできないこと…これは!特異な生まれを持つあなたにしかできないこと! あなたは!」

「人間を超越する!!あなた自身の『血』を生贄にね!!」

「………身体が…軽い…空気に、いや、闇に溶けていくようだ」

「死後の世界か…どんどん身体が浮いて…町中を見渡しているようで…」

「体中に!『不滅のパワー』が行き渡ってゆくぞ!!」

「扉を超えて…誕生した!!新しい神が!!この世界にーーーー!!!」

「その力は『不滅』!!『全知全能』!!! あなたは全ての生物を!!遥か突き抜けて超越したーーー!!!」

「貴様ァ…私に何をしたのかわからんが…感謝しているぞ! 実にスガスガしい気分じゃあないかァああははははは!!」

「人間が神を持つように…悪が神を持ってもいいじゃあないですか 私の役目はこれにて終了といったところ…」

「邪な力を、世界中だけではなく、異界からも呼び出し、世界を混沌の力で満たそうとしただけ」

「その力の使い道は、あなた次第…思うがままに、この世界に邪悪なる混沌を!」

「もはや人間に固執することはない!打ち負かされることだってない!気に食わんものを有無を言わさず支配できる!」

「私の身体を雲のように形成する、溢れるほどの悪意!知性!経験!思い知らせてやる!身勝手な人間共よ!」

……………………………………………『悪意に支配された世界』⑪

その時、世界から大きな争いが消えた。

大きな闇がしばらく太陽を隠し、晴れた頃には、すでに人々の間に悪意と呼ばれる感情は消えていた。

確かに『悪意』が世界を支配していた。

闇が覆った星に、『悪魔』と呼ばれる者たちが実際に現れたのはその時だった。

人間と悪魔の、長い戦いの幕開けだった。

その頂点に君臨していた、『悪意の太陽』は、姿を再び見せることはなかったという。

その姿や御業を、一部の者共は今まで伝えてきたが、至って最近のことにも関わらず、今となっては語る者もおらず、古き神話の一部となっている。

だが、神とされた存在は、今…密かに存在していた。

その存在が誕生し、悪魔が表舞台に登場してから百年以上あとのことであった。

「もう十分だ 最初から満ち足りていたのだ…頂点とは案外つまらんものだ」

「この身体ではどうせ死にたいと思っても死ねんだろうし、死んだとしても天国どころか、地獄に行けるかどうか」

「ふ…はははは! 下らん!今更どうというのだ!」

「………あ」

「ン!…なんだ小汚い小娘…貴様など大して栄養にもならん…とっとと失せろ」

「………」

「どんな目で私を見ようと、貴様に何かくれてやるということはないぞ」

「ねぇねぇ、あなたも、悪魔…なの?」

(こいつ…人間のような姿をしているが、生まれて間もない悪魔か 自分が悪魔として生まれてきたことの実感がないのか?)

「私はお前のような下級悪魔風情と違うのだ…この際だから立場をわきまえておくのだな」

「すごいの?」

「…何をやったらすごいと思うかにもよるが、私にできないことはない」

「じゃあ、えっと…お友達になって?」

「面白い冗談だな」

「できないの?」

「ン…まさか…できないワケでは…ないが」

「じゃあ決まり!お友達になったからーお互いのコトをあだ名で呼ぶの!」

「…私の名前はない、とうの昔に捨てたからな」

「なんで私が欲しいものを捨てられるの?」

「嫌なモノは嫌だったからさ」

「人間は、友達だっているし、名前だってある…それが羨ましいの」

「名前は、その人がその人である証で、友達になったら呼び合うの」

「私は人間だったが、友達なんていなかった」

「じゃあ私が初めての友達だね、お互い様だぁ」

「…こんなちっぽけなヤツと同じ立場になるとはな…小生意気な娘だ」

「それじゃあ私があなたに新しい名前をあげちゃいます」

「なんだいきなり、それに友達になるなんてまだ言ってないぞ」

「なんでもできる人のことを『オールマイティ(全知全能)』と言います」

「………」

「『ザ・オールマイティ』……うーん、ちょっと言いづらいね」

「ざおるまぃてぃ、ざぉるみぃてぃ、ざーるみーてー」

「お前…なかなか面白いヤツだな… 今までお前みたいなのに出会ったことはなかった…」

「私の名前は…『ザルミテ』 これで言いやすい」

「おっ!ほんとだ!ミテ様すごい!」

「自分で導き出しといて略すのか…まぁそれもいいだろう」

「ねぇねぇっ私はー?」

「ふん、そうだな…お前の名前は………」

……………………………………………『メイドの土産』⑫

「私がミテ様のすごさに気づいたのは優しさだったんだ」

「もはや悪魔ではないな 人畜無害、小動物みたいなもんだ」

「家畜を襲おう、お土産にしよう」

UMAみたいだな」

「私がミテ様の専属メイドになったのは、私がいつか出会ったメイドさんに憧れたのと、ミテ様の教育方針だったからだよね」

メイドさんは機械時計のように正確じゃなきゃあいけないからな…ピシっとしてほしかったんだよ」

「どんな人だったっけ…」

メイドさんなんてみんな同じに見えるな それこそ、種族が違うとかしてくれないと」

「ミテ様の真実の目を持ってしても?」

「目がすごいワケじゃない そりゃあ認識はするよ、やってることは同じだろ その点、マインのやることはまったく予想できん」

「ミテ様よりすごい」

「ある意味ね」

「過去の話なんて、どうでもよかったね」

「散々言わせといてそれとは困るな」

「ミテ様も、私も、人間のように刹那的に生きるのが楽しいのです 今を全力投球」

「ミテ様は『不老不死』かもしれないケド、私はそうもいかないんじゃないの? だから楽しいことをいっぱい体験したい」

「それも過去になってしまえばどうでもよくなるんじゃあないか?」

「そういうことでいいと思います 「あくま」で今を生きることです」

「それは、お前のためになることだと私は思うね…だけど最初に言ったこと覚えてる? 反省しなければ…」

「…たまには過去を振り返ってもいいじゃあないですか 前に進めるのなら」

……………………………………………『人形は「二体」いた!』○

「……………ここは」

「ここはどこ…ここは…ワレは一体ダレ…」

(おめでとう!!マリナ!!実験は成功だったんだよ!!)

「この…脳に直接…響くような声は一体…うう」

(マリナ!君のとなりにいるじゃあないか!よくみろよ!)

「我はマリナというのか?女みたいな名前…ん、女か?」

(君の名前は『マリナ・BBBBBBBBB(ナインビー)・イトゥワール』だ)

「ⅨB? とてつもなくステキな名前だが、反重力が働いているお前は一体なんだ」

(我が名は、『浅倉 真理(アサクラ シンリ)』…この物語の主人公さ)

「浅倉さん…って呼ばせてもらうけどいいね お人形さんみたいでキャワイイな」

(照れるぜ でもマリナ…お前もキャワイイぞ♪)

「それにしても、名前がわかっても我が何者かというのはわからない…そこんところどうなんだ?」

(マリナは天才科学者だ 普通の人間では辿り着かない速さで仲間のピンチに駆けつける)

「浅倉さんは元気だなぁ(もっとマシなこと言ってほしいなぁ)」

(オイ、聞こえてるぜ……ってアレ?)

「でもって、科学者…っていうのはどういったことができるのさ」

(劇的に、この草ッ原に家が建てられる やってみろ!)

「ハァー家が建たないかなー!」

(ドジャァ―z__ ン マジにレンガの家!)

「我は…本当に天才なんだなッ!!」

(一握りのな、賢しくて悪いか?)

マリナ(?)の強化実験が実は『大』成功していて、実は生きていたことは、ザルミテを含め誰も知る由がなかった。

そしてこの時代にも、彼女がまったく変わらない姿で存在していることも誰も知る由がなかった。

浅倉さんがフリーダムでも、マリナにしか声が聞こえてないのでそれは読者と二人だけの秘密。

      

              

 

        ロリータ  

       『悪魔メイド♡マインちゃん 不滅の太陽編 終わり』

クロスメイズ案

 

目覚めたときには、自分以外の誰もいなかった。
物音ひとつたたない屋敷には、オバケすらいない。
「ミテ様…?ザルミテ様?マーイル?トイトイ~?えーっと…イーノ?」


幼子の声は屋敷の広さに吸われ、返ってくることはなかった。
ある屋敷では跡形もなく主人だけ消え、ある人は主人とはぐれ、ある人の鉢に入れた主人は消えた。
人ならざるメイド達の、主人が一斉に姿を消したのだ。
それどころか、この世界全てのものが、そっくり作り物に入れ替わったようだった。


「これは…一体どういうことなのでしょう?」
「みなさん、一体どこに…」
「これじゃあ、メイドとは言えないわ」
「前略ふとももください」
各地から集結したメイド達は、自らの置かれた状況と、それぞれの同業者が置かれた状況を整理していた。
そこに、見覚えのないメイドが姿を現す。
「お初にお目にかかりますわ…」


「あなたは?」
「私はあなたがたと同じ存在です、そして…あなたがたを招待させていただいたのも私」


消えた主人の行方は?謎のメイドの正体は?メイド達の運命は?
『メイドチーム、宇宙(そら)へ!』動き出せ未来!

 

 

 

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『オリうご』企画が始動したんです

オリジナルキャラや街などを他の参加者と共有してコラボレーションする企画

が開幕しました。

もちろん俺も参加してます。

参加する上での詳細などが記載されているメモの検索は「オリうご」もしくは「ビショップ」(ポーン)さんで。

 

REOはこのために作ったと言えるキャラと街があるので、鼻息は荒いです。

ヤル気十分で積極的に絡んでいきたいので、参加者さんが増えたら嬉しいですね。

皆さんも興味を持ったりしたら「オリうご企画説明メモ」のほうを覗いてみてくださいね!